「アベノミクス」が逆に不安をかきたてる。大前研一の新作『低欲望社会』10月3日刊。

 

麻生発言は暴論か正論か
「90歳にもなって老後が心配とか、わけの分かんないこと言っている人がテレビに出ていたけど、いつまで生きているつもりだよと思いながら見ていた」
2016年6月、麻生太郎財務相は金融資産を貯め込む高齢者にもっとお金を使ってもらいたいという話の流れの中で、そう発言して物議を醸(かも)しました。しかし、本書の著者の大前研一氏は、「その趣旨は間違っていない」として、本書中でこう述べています。

〈何でもかんでもマイクロマネジメントしようするのが安倍政権の悪しき習性だが、そういう“上から目線”のチマチマしたやり方ではなく、根本的な規制撤廃によって自由な学び方、自由な働き方、自由な稼ぎ方、自由な生き方ができるようにすることこそが最も重要なのである〉
〈「不安」を抱えながら「低欲望」な生活を続けている日本人の生き方を変える改革こそが、いま必要な最大の経済成長政策なのだ〉

歴史上初のバラ撒き国家
安倍政権は先ごろ、事業規模約28兆円の経済対策を発表しました。実際には民間支出などの”水増し”分が多いとも言われていますが、それにしても巨額であることに変わりはありません。これについて、大前氏は、「日本の失業率は現在3.0%で、ほぼ完全雇用の状態」にある時に「経済対策と称してカネをバラ撒くような国は、私が知る限り歴史上初めてだ」と痛烈に批判します。そして、すでに国の借金(政府債務残高)がGDP(国内総生産)の2倍にあたる1000兆円を超え、さらに借金を積み増している中で、こうした”大盤振る舞い”をすることが、かえって国民の不安を煽ってしまっていると喝破します。

〈安倍政権が「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」「切れ目のない経済対策」「第2次安倍政権以降最大の28兆円」などと喧伝すればするほど、国民は日本経済の先行きは暗いと思ってしまう。これこそアベノミクスでも景気がいっこうに上向かないパラドックス(逆説)の仕組みであり、私が「心理経済学」として提唱していることである〉

「不安」をなくせば、この国は甦る
なぜ「アベノミクス」では景気が良くならないのか? 日本が“借金漬け”から脱する日は来るのか? 「皆が等しく貧乏になる国」で本当にいいのか? 日本経済が抱えるそれらの難題を読み解くためのキーワードが、大前氏の言う「低欲望社会」です。
現在、個人金融資産は過去最高の1700兆円超となり、企業の内部留保も380兆円に膨らんでいます。しかし、「不安」があって「低欲望」になっているために、そのお金が外に出てこないというのです。

〈つまり日本は老若男女すべてが欲望を抑えて貯金に回し、少しでも不安を小さくしようとしているのだ。逆に言えば、将来に対する不安を解消できれば、自然とお金が出てきて消費が増えるわけだ〉

本書は、世界的な経営コンサルタントであり、各国の国家アドバイザーも務めた大前研一氏による「心理経済学」の決定版を再編集して新書化したものです。アベノミクスがいよいよ行き詰まりつつある今こそ、多くの国民に読まれるべき一冊です。

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【著者プロフィール】大前研一(おおまえ・けんいち)
1943年福岡県生まれ。経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年に退社。現在、ビジネス・ブレークスルー(BBT)代表取締役、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材育成に力を注いでいる。近著に『「0から1」の発想術』『大前研一「ビジネスモデル」の教科書』『君は憲法第8章を読んだか』『IoT革命』。

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「アベノミクス」が逆に不安をかきたてる。大前研一の新作『低欲望社会』10月3日刊。