直木賞作家が挑んだ「人情噺」の世界。『落語小説集 芝浜』(9/15刊)

 

本邦初、落語のノベライズ

時代小説の第一人者・山本一力氏が古典落語を小説化しました。
選んだ演目は、「芝浜」「井戸の茶碗」「百年目」「抜け雀」「中村仲蔵」の5つ。
いずれも、人情世界を温かく描いて、落語ファンから人気です。
山本氏一流の人物造型、風景描写で大幅に肉付けしてふくらませ、小説にしています。

「芝浜」
商売を怠けていた鮮魚の担ぎ売り・勝治郎が、女房のおしのの説得で仕事をする気になり、芝浜の魚河岸に仕入れに行った際、大金入りの財布を拾う。これで一生遊んで暮らせると喜んだ勝治郎が祝い酒を飲んで眠りこけ、起きると金がなくなっていた。おしのは「夢を見たんだろう」と言って、仕事に行かせる。勝治郎は商売に励み、お店を持てるまでになり……。

「井戸の茶碗」
曲がったことが大嫌いな屑屋の清兵衛。ある時、浪人から買い取った仏像を、通りかかった細川家下屋敷の若侍に売る。さっそく、若侍がすすけた仏像を洗っていると、中から50両の大金が出てきた。清兵衛にそのことを話し、浪人に金を渡すが、売ったからにはこの金は自分のものではないと突っぱね……。

「百年目」
近江屋の頭取番頭・治兵衛は堅物で通っていて、遊びひとつしたことがなかった。ある日、彼は、あつらえた長襦袢を着て、幇間連中を連れて向島へ花見に繰り出した。すると、主人である禄右衛門と鉢合わせに。醜態を見られたのでクビになるのが確実だと頭を抱えた治兵衛だったが、禄右衛門に呼び出されると……。

「抜け雀」
一文無しなのに宿に泊まった絵師・平三郎は、宿賃のかたとして衝立に雀の絵を描くことに。朝になると、その雀が衝立から飛び出し、餌を食べて戻ってきて、再び、衝立の中に。宿は「雀のお宿」と評判になり大繁盛するが、その絵を見た別の絵師が「このままでは遠からず雀は死ぬ」と言い、止まり木を描くことに……。

「中村仲蔵」
歌舞伎の大部屋役者・仲蔵は、苦労の末に名題に昇進し、初の座頭演目「仮名手本忠臣蔵」五段目の定九郎役をふられた。だが、あまりいい役ではない。女房のお岸は「この役を中村仲蔵がどう演ずるのかという親方の親心があるに違いない」とさとす。妙見様へ願掛けを始めた仲蔵は、満願日の帰り、雨宿りとして寄った蕎麦屋で武士に遭遇し……。

高座芸である落語を小説という形で表現する、新しい試み。
聴いてから読むか、読んでから聴くか。
読む落語は、また格別です。

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【著者プロフィール】山本一力(やまもと・いちりき)/1948年、高知県生まれ。東京都立世田谷工業高校電子科卒。14歳のとき上京し、高校卒業後、旅行代理店、広告制作会社、航空会社関連の商社勤務などを経験。97年、『蒼龍』でオール讀物新人賞を受賞し作家デビュー。2002年、『あかね雲』で第126回直木賞を受賞。新しい時代小説の書き手として脚光を浴びる。15年には第50回長谷川伸賞を受賞。著書に『銀しゃり』(小社刊)『かんじき飛脚』『人情屋横丁』『くじら組』『おたふく』『べんけい飛脚』『龍馬奔る』『ジョン・マン』シリーズほか多数。

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(撮影/宮地工)

直木賞作家が挑んだ「人情噺」の世界。『落語小説集 芝浜』(9/15刊)