【昭和の日を機会に振り返る】昭和天皇の87年の生涯を“追体験”する。「昭和天皇は何と戦っていたのか 『実録』で読む87年の生涯」

 

 4月29日は「昭和の日」。もともと昭和の時代に「天皇誕生日」の祝日だったものが、平成元年(1989)から「みどりの日」となり、その後「国民の祝日に関する法律」の改正に伴い、平成19年(2007)より「昭和の日」となりました。

 国民の祝日に関する法律第2条では、昭和の日は、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日とされています。戦後71年目の本年、1年に一度の「昭和の日」というせっかくの機会です。この国の未来を考えるためにも、昭和天皇とともにあった昭和の時代を見つめ直してはいかがでしょうか。

 

 格好の本を紹介いたします。

「昭和天皇は何と戦っていたのか 『実録』で読む87年の生涯」

 

 宮内庁が24年余りの歳月をかけて作成した「昭和天皇実録」。これは、全61巻、1万2137ページにも及ぶ一大歴史資料であり、超一級資料といえども、読みこなすのは大変な作業になるであろうことは想像に難くありませんし、一般の方には現実的でありません。また、全巻完結が2019年3月の予定であり、残念ながら現在はその全体を把握することはできないのです。

 

 そこで登場したのが、本書。

「昭和天皇実録」を丹念に読み込んだ著者が、平易な言葉とダイアリー方式で、昭和天皇の87年8か月の生涯を綴ります。

 著者の井上亮氏は、昭和天皇に仕えた宮内庁長官・富田朝彦氏が付けていたメモ――いわゆる「富田メモ」を発掘し、06年度の新聞協会賞を受賞した日経新聞記者です。昭和天皇が、A級戦犯の靖国神社への合祀に対して不快感を記していたことが注目を浴びました。深い見識と取材経験を持つ著者が「実録」を読み込み、新事実を次々と発見していきます。

 今回、著者の強い関心の一つは、戦後の昭和天皇を苦しめていたもの、です。戦前の軍部と昭和天皇が戦っていたことは、様々な資料で既に知られていますが、戦後の昭和天皇の葛藤について論じられることは多くはありませんでした。著者は「実録」をもとに、戦後の昭和天皇の心象風景を描きます。

 

 激動の時代を、昭和天皇の人生とともに追体験でき、充実の読後感を味わえるのと同時に、「実録」の全体像がすべてわかる貴重な一冊です。

 

「昭和天皇は何と戦っていたのか

   『実録』で読む87年の生涯」

井上 亮・著  定価:本体1,600円+税

本書の内容はこちら

 

 

【著者プロフィール】井上 亮(いのうえ・まこと)

1961年、大阪生まれ。86年日本経済新聞社に入社。東京、大阪の社会部で警視庁、大阪府警、法務省などを担当。現在、編集委員(皇室、近現代史)。元宮内庁長官の「富田メモ」報道で2006年度新聞協会賞を受賞。主な著書に「熱風の日本史」「忘れられた島々 『南洋群島』の現代史」。

 

【昭和の日を機会に振り返る】昭和天皇の87年の生涯を“追体験”する。「昭和天皇は何と戦っていたのか 『実録』で読む87年の生涯」