今期アカデミー賞「黒人外し」の犠牲になったと言われる超話題映画の原作『コンカッション』(ジーン・マリー・ラスカス著、田口俊樹訳)発刊!

 
※書影はアメリカで刊行された原書です。4月刊行の日本語版のものとは異なります。 

 2011年、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の選手と元選手約6000人がNFLを相手取り集団訴訟を起こしました。起訴内容は、「フットボールと認知症との関連性について選手を欺き、その嘘がばれないように偽りの調査部門を創設した」詐欺容疑。以前から、NFLのスター選手が引退後に性格が変わってしまい、異常行動を起こし、死に追い込まれる、というケースが頻発していたのです。

 アメリカン・フットボールは言わずと知れたアメリカで一番人気のスポーツ。その最高峰NFLは、年間80億ドルをはじき出すアメリカ最大の娯楽産業です。試合の最大の見せ場は選手同志の激しいタックル。しかしそのタックルによって脳震盪(=コンカッション)を繰り返すことこそが、若くして選手達に認知症を発症させ、悲惨な末路を辿らせる――あるときこの事実が明るみになり、オバマ大統領が「自分に息子がいたら、フットボールのプレイを許可しない」と発言するなど、アメリカ全土を巻き込む大スキャンダルとなりました。

 本書は、その事実を発見したナイジェリア移民の監察医ベネット・オマルが、人種差別や偏見と闘いながら、「不都合な事実」を隠蔽しようとする巨大組織NFLに立ち向かう姿を描いた実話です。アメリカの男性ファッション誌〈GQ〉にジャーナリストの著者が寄稿した記事「Game Brain」をまとめたもので、連載中から大きな話題となっていました。

 前述したように本作は昨年映画化(主演ウィル・スミス、監督ピーター・ランデズマン、製作リドリー・スコット)し、クリスマスに全米公開されました。当然、NFLにとって映画化は歓迎したくないこと。そのため、映画公開前には映画会社側が製作者に対してNFLを刺激しない内容にするよう求めたという情報が漏れ伝えられました。

 公開後はウィル・スミスの演技が高く評価されオスカー主演男優賞有力候補と目されていましたが、まさかの落選。スパイク・リー、マイケル・ムーア、そしてスミス夫妻らによる授賞式ボイコット運動にまで発展した「白すぎるオスカー(2年連続で演技賞候補者が白人のみだった)」の犠牲になったとも言われています。

 本書は今年のオスカーとどこか重なるような、未だ解決されないアメリカの人種差別や偏見の中で、一人のアフリカ出身の男が黙々と自分の道を進みながら「アメリカの正義」を体現してく姿を描いた一級のエンタテインメント作品です。

 翻訳者の田口俊樹さんはあとがきにこう綴っています。

《アメリカン・ドリームにかつての輝きはない。そのことと、低所得者層の支持を集めて、トンデモ候補が次期大統領選に浮上してきたアメリカの現状とは、決して無関係ではないだろう。本書は読む者にそんなことも考えさせる、とにもかくにも読んで興味の尽きない面白傑作ノンフィクションである。》

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著者プロフィール:ジーン・マリー・ラスカス

ジャーナリスト、ピッツバーグ大学教授。〈GQ〉誌のほか、〈エスクァイア〉〈スミソニアン〉〈ワシントンポスト・マガジン〉などにも寄稿。これまで6冊のノンフィクションを上梓している。

今期アカデミー賞「黒人外し」の犠牲になったと言われる超話題映画の原作『コンカッション』(ジーン・マリー・ラスカス著、田口俊樹訳)発刊!