【「日本美術全集」全20巻完結】過去という時間が、未来に希望を運ぶ舟になる。

 

 2012年12月、小学館創業90周年記念企画としてスタートした『日本美術全集』が、2016年2月25日の刊行で全20巻完結となりました。具体的な編集作業だけでも5年、準備期間を合わせると6年以上を費やした仕事が一段落します。

 

 美術全集の編集作業は、担当者が一点一点作品を選んでいくわけですが、いかに現代の作品であろうとも、いわば「過去」を扱わざるをえませんし、歴史に属する仕事です。しかし、収載されるのは、たとえ「過去」という時間であっても、「美術全集」は、たえず未来に運ばれる舟のようなものであると、刊行開始時もそして完結した今も強く感じています。

 そうでなければ、収載作品を選んでいく際に、“この作品が、かならず読者である鑑賞者の心にかけがえのないものをもたらすはずだ”という、祈りにも似た希望が編集者の頭に自ずと涌いて来る理由がわかりませんし、いくら優れた「日本美術のベスト・オブ・ベスト」の本が出来上がっても、未来へと繋がっていかないとしたら、ただ過去を封じ込めたもので終わってしまい、編集部としての仕事の達成感は半分にも満たないものとなる、そんな思いに駆られる理由がわかりません。

 

 法隆寺金堂の仏像が1350年間そこにたたずみ続けるように、伊藤若冲が200年の眠りから覚めて日本美術ファンを日夜魅了しているように、この美術全集も、過去に属するのでなく、たえず未来へ希望を運ぶ舟として機能していくものでなければ、意味も意義もありません。予断を持たず、真摯に作品と向き合い見つめ続け、最新の成果をもとに、決して時代の波に洗われても古びない、さらには、この全集によって、それらの作品がこれまで以上に魅力的に輝き出す、そうした美術全集を目指してまいりましたし、なんとか達成できたと思っています。

 

小学館『日本美術全集』編集部

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