現役最後まで貫いた【山本昌という生き方】。50歳まで投げ続け、今季限りでの引退を決意したレジェンドの、プロ野球人生集大成の言葉の数々。

 

 今年8月に50歳の誕生日を迎えた中日ドラゴンズの山本昌が、10月7日、マツダスタジアムで行われた広島戦で、現役生活最後のマウンドに上った。

 打者ひとりだけとの対戦と決められた限定の先発登板。山本昌は、広島カープの1番打者・丸佳浩をプロ野球人生最後の対戦相手として打席に迎えた。

 

 プロ野球生活32年目の今季。山本昌は8月9日に初登板を果たす。この試合には、MLBジェイミー・モイヤーの持つ最年長勝利の世界記録更新の期待がかかっていた。ところが、まさかのアクシデント。投球中に、利き腕である左手の人差し指を突き指したため、2回途中、わずか22球を投げたところでマウンドを降りなければならなかった。

 

 その時の指のけがが完治していなかったため、人差し指に負担のかからないスクリューボールしか投げられなかったが、山本昌は、自らの代名詞とも呼ばれたその変化球で、丸を見事にセカンドゴロに打ち取った。

 

 

 まだ、やれるのではないか。

 来季も現役を続ければ、世界記録を更新できるだろう。

 多くのファンがそう思った。

 もちろん、本人も悩みに悩んだのだろう。その心情は、9月30日に開かれた引退会見での「悔いはあるけれど後悔はない」という言葉に表れている。

 

 だが山本昌は、現役引退の決断を下した。

 

 彼は本書『山本昌という生き方』の中で、

「記録を達成した選手だからこそ、記録のためだけにプレーしてはいけない」

と記している。

 そして、引退会見で次のようにも語っている。

「僕らは戦力としてプロ野球選手でいたいと思っている。そこで今年1年チャンスを頂いて、このような成績で終わってしまった。たまたま記録が目の前にあるので、惜しいと言われるけれど、それがなければ今辞めるのは当然のこと。しっかり決断できたと思っている」

 

 中日ドラゴンズは今季、セリーグ5位の成績に終わった。これで3年連続のBクラス(4位以下)。実は山本昌がドラゴンズに入団した84年以降、3年以上続けて4位以下に終わるのは初めてのことだった。

「チームが大きく変わらないとダメだという思いがあった。そして、自分がその邪魔になっちゃいけないと思った」

 

 この決断こそが、「山本昌という生き方」だ。

 

 10月7日、広島・マツダスタジアムで、打者ひとりを打ち取った山本昌には、満員の観衆から拍手が送られた。カープにとってはCS進出を賭けた大一番だったが、その瞬間だけは球場が温かい雰囲気に包まれた。

 ただ、ここまで実績を残した選手が現役を退く場合、本来ならばホームゲームで大々的な引退セレモニーが開かれるはず。しかし、最後まで現役にこだわったため、山本昌は敵地で最終登板に臨むことになった。

 こういう最後も、いかにも彼らしい「山本昌という生き方」だろう。

 

 本書では、32年間プロ野球の世界で生き抜いてきた、山本昌独自のモノの捉え方や価値観、判断基準などが紹介されている。

 

 どうやって野球と向き合ってきたか。

 人生の岐路でどういう人と出会い、支えてもらってきたか。

 普通の生活で何を大切にしているか。

 プロ野球人生で貫き通した信念とは何か。

 

 50歳まで投げ続けたレジェンドの、プロ野球人生集大成の言葉の数々に耳を傾けてほしい。

 

『山本昌という生き方』山本昌・著 定価:本体1,300円+税

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現役最後まで貫いた【山本昌という生き方】。50歳まで投げ続け、今季限りでの引退を決意したレジェンドの、プロ野球人生集大成の言葉の数々。