森達也著『人間臨終考』(10/9刊)の歴史的な人物の死から斬り込む、新感覚の「日本現代論」で、いまを撃つ!

 

 気鋭のノンフィクション作家・森達也が、類いまれなる筆力と妄想力を炸裂させて、歴史上の人物がどのように死んでいったのか、最期に何を思っていたのかを、ときにフィクション&パロディを織り交ぜながら描き、現代社会の論点・矛盾点を痛烈に、ユーモアたっぷりにあぶりだします。

 登場人物は、石川五右衛門、ブッダ、ガガーリン、キュリー夫人、ノーベル、チェ・ゲバラなど18人。例えば、チェ・ゲバラが日本の国会議員になって、個人個人が熱狂する「カーニバル」ではなく「盆踊り」のように全員一緒に熱狂する国民性を危惧したり、キュリー夫人が福島第一原発の事故を知って、「日本は資源がないから原子力発電というけれど、ウランを輸入しているのはどういうこと?」と不思議に思ったり……様々な試みがなされています。

 この本の執筆に至った経緯は、そもそも「死」ついての考察を深めていた筆者が、それをアウトプットする手段として、歴史上の人物、つまり偉業を成し遂げたヒーローたちはどのように死んでいったのか、彼らはちゃんと死んでいるのか、に注目するところから始まります。

 彼らの最期を調べると、人類初の宇宙飛行を実現したガガーリンは若くして飛行機事故で亡くなっていたり、ブッダはきのこか豚肉による食中毒が死因だったり、意外な最期を迎えた人物も少なくなくありませんでした。

 また、彼らの「死」から、社会の矛盾や運命に翻弄される個人の切なさに筆者は心を寄せていきます。結果、「死に際を見れば世の中がわかる」というような良質の現代社会論ができあがりました。

 編集者から見て、執筆期間中の森さんは実に楽しそうで、筆が乗っていたのがとても印象的でした。軽快な文章ながら、いま私たちが考えなければならない重いテーマをしっかりと考えさせてくれる一冊です。

[著者プロフィール]森達也/映画監督、作家。1998年、テレビ・ディレクター時にドキュメンタリー映画「A」を公開。世界各国の国際映画祭に招待され、高い評価を得る。2001年、続編「A2」が、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。著書に、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『A3』(集英社インターナショナル)、『下山事件』(新潮社)、『死刑』(朝日出版社)、『いのちの食べかた』(理論社)など。映画監督、執筆活動の他、テレビ、雑誌、講演、大学教授など幅広く活躍する。映像・活字両面で、いま最も注目を集める作家。

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森達也著『人間臨終考』(10/9刊)の歴史的な人物の死から斬り込む、新感覚の「日本現代論」で、いまを撃つ!